
金の十字架の呪い
チェスタートン ギルバート・キース

結末まで書いています(ネタバレを含みます)
旗本の妻お道は、枕もとに濡れた女の幽霊が出ると訴え、離縁を願う。池や井戸をさらっても手がかりはない。Kのおじさんに相談された岡っ引の半七は、貸本屋の草双紙と菩提寺の住職に目をつける。幽霊の話はお道の作り話で、住職の不吉な予言を信じた母が娘を守ろうとしたものだった。
明治のある雨の夜、少年の「わたし」はKのおじさんの家を訪ね、長年気になっていた「おふみの一件」を聞かせてもらう。おじさんは、自分が二十歳だった元治元年の話を語り始める。
旗本・松村彦太郎の妹お道は、娘のお春を連れて実家に戻り、小幡家から暇を貰いたいと言い出す。兄に問い詰められて、枕もとに毎晩濡れた若い女が現れ、お春も「ふみが来た」と叫ぶのだと打ち明ける。
松村は夫の小幡伊織を訪ねる。はじめは笑っていた小幡も詮議を始め、古池や井戸をさらうが、鮒や鯉、赤い泥鰌のほかは何も出ない。次の間に隠れて見張った夜、お春は再び叫ぶが、二人の目には何も見えなかった。
噂を聞いたKのおじさんは探索を引き受け、音羽の請宿・堺屋の帳面を調べるが、おふみの名は見つからない。そこへ現れた岡っ引の半七は、屋敷で草双紙を読むか、菩提寺はどこかと尋ね、事件を引き受ける。
半七は貸本屋の田島屋で、二月に小幡家へ貸した「新編うす墨草紙」を見つける。その挿絵には、池に沈められた腰元の幽霊が濡れた姿で描かれていた。二人が下谷の浄円寺を訪ねると、住職は青くなって震え、手厚くもてなした。
報告を受けた小幡に問い詰められ、お道は打ち明ける。浄円寺の住職に、夫といると母子ともに災いに遭うと言われて悩んでいた。雛を片付けた日に草双紙の絵でお春を怖がらせたところ、お春が夜に「ふみが来た」と叫ぶようになり、それを口実に怪談をこしらえて家を出ようとしたのだった。
小幡はお道を許し、表向きはお文の魂の追善供養を営んで騒ぎを収める。半年後、浄円寺の住職は女犯の罪で寺社方に捕らえられた。おじさんは話の秘密を守るよう語り手に言い、語り手はのちに老いた半七と知り合う。
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わたしの叔父は江戸の末期に生まれた人で、化け物の話などを始めると、いつも苦い顔をした。
しかし世の中には解らないことがある。あのおふみの一件なぞは……
おふみの一件が何であるかは、誰も知らなかった。
この読切は全40ページ。続きは漫画ビューアで、スマートフォンでもそのまま読めます。
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結末に触れない紹介です
明治のある雨の夜、少年の「わたし」は、Kのおじさんから長年気になっていた「おふみの一件」を聞かせてもらう。話は元治元年の江戸にさかのぼる。番町の旗本・松村彦太郎のもとへ、小幡家に嫁いだ妹のお道が三つの娘お春を連れて現れ、もう小幡の屋敷にはいられないから暇を貰ってほしいと言い出す。問い詰められたお道が明かしたのは、雛を片付けた晩から毎夜、枕もとに頭から着物までびしょ濡れの若い女が現れ、手をついてうずくまるという話だった。そのたびにお春も「ふみが来た」と叫ぶ。夫の小幡伊織は古池や井戸をさらい、松村と次の間に隠れて見張るが、二人の目には何も見えない。やがて屋敷に幽霊が出るという噂が広まり、旗本の次男で閑をもてあます若き日のKのおじさんが探索を引き受ける。手がかりを求めて請宿の古い帳面を繰っていたおじさんの前に現れたのが、神田の岡っ引・半七だった。半七は思いもよらない問いを重ねていく。捕物帳の第一作を、全40ページで描く。
青空文庫の図書カードによれば、初出は雑誌『文藝倶楽部』大正6(1917)年1月号で、半七捕物帳シリーズの第一作。物語は元治元年(1864)三月の江戸、番町・小石川西江戸川端・音羽・下谷を舞台にし、明治の雨の夜にKのおじさんが語る枠物語になっている。本漫画は幕末の武家屋敷と町並み、明治の石油ランプの座敷を描いた。屋敷の間取りや人物の顔立ち、当時の既婚女性の鉄漿を描かない点は翻案上の表現である。
元治元年の江戸。旗本の妻お道は、夜ごと枕もとに現れる濡れた女の幽霊におびえ、離縁を願い出る。幼い娘も「ふみが来た」と叫ぶ。その正体を神田の岡っ引・半七が追う、捕物帳の第一作を漫画化。
結末には触れていません
元治元年の江戸で、旗本の妻お道が、枕もとに濡れた女の幽霊が出ると訴えて離縁を願います。娘のお春も「ふみが来た」と叫び、夫や兄が調べても手がかりはありません。探索を引き受けたKのおじさんが岡っ引の半七に相談し、半七がいくつかの問いから幽霊の正体に迫ります。
原文「ふみが来た。ふみが来た」漫画の10ページでこの場面を漫画で見る
岡本綺堂が江戸の岡っ引・半七の手柄話として書いた探偵小説のシリーズで、「お文の魂」はその第一作です。1917(大正6)年1月の『文藝倶楽部』に掲載され、その後約20年にわたって書き継がれました。捕物帳という分野の先駆けとされています。
事件は元治元年(1864)三月の江戸で、京都で蛤御門のいくさがあった年です。番町の松村の屋敷、小石川西江戸川端の小幡の屋敷、音羽の請宿や貸本屋、下谷の浄円寺などが出てきます。その話を、明治になってKのおじさんが雨の夜に語り聞かせる形になっています。
江戸で町奉行所の同心などの手先として犯罪の探索や捕縛を手伝った町人のことです。作中の半七は神田に住む岡っ引で、御用をかさに着て弱い者をいじめることのない、正直な男として紹介されます。
岡本綺堂(1872〜1939年)です。
初出は『文藝倶楽部』大正6(1917)年1月号です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の40ページで、約12分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
濡れた女の幽霊は、お道が貸本屋から借りた草双紙「新編うす墨草紙」の挿絵の腰元でした。その絵をお春に見せて怖がらせたため、お春が夜に「ふみが来た」と叫ぶようになりました。お道はそれを利用して、自分にも幽霊が見えるという話をこしらえたのです。
原文「その幽霊が物凄く描いてあった」漫画の27ページでこの場面を漫画で見る
菩提寺・浄円寺の住職に、あなたは相が悪く、夫といると命にかかわる災いが来て、娘にも災難が落ちるかもしれないと言われたからです。娘を守るには夫の家を去るほかないと思い詰め、お春の叫びを口実に怪談をこしらえました。
原文「どうもあなたは御相がよろしくない」漫画の33ページでこの場面を漫画で見る
小幡はおじさんの取りなしでお道を許し、表向きはお文の魂の追善供養を営んで騒ぎを収めます。秘密を知らない松村は不思議な話として人に語り、半年後に住職は捕らえられました。語り手はのちに老いた半七と知り合い、彼を江戸時代の隠れたシャアロック・ホームズと呼びます。
原文「彼は江戸時代に於ける隠れたシャアロック・ホームズであった」漫画の39ページでこの場面を漫画で見る
番町おおよその位置
場所は番町で、その頃には江戸時代の形見という武家屋敷の古い建物がまだ取払われずに残っていて
語り手がKのおじさんから話を聞く家と、お道の兄・松村彦太郎の屋敷がある武家屋敷町です。原作は屋敷の位置を特定していないため、千代田区の番町一帯の概略の位置を示しています。
音羽おおよその位置
請宿は音羽の堺屋というのが代々の出入りであった。
Kのおじさんが請宿・堺屋の古い帳面を調べ、半七と出会う町です。貸本屋の田島屋も音羽にあります。店は作中のもので、文京区音羽一帯の概略の位置を示しています。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。

AI が作成した案内キャラクターで、本人の発言ではありません
「私は岡本綺堂。東京の芝高輪の生まれで、本名は敬二といいます。新聞記者をしながら芝居を書き、『修禅寺物語』で世に出ました。ホームズの物語に触発されて、江戸の岡っ引・半七の話を書き始めました。」
「わたしの叔父は江戸の末期に生まれたので」——『半七捕物帳 お文の魂』原文より
「『お文の魂』をどうぞ。旗本屋敷に出るという濡れた女の幽霊の噂を、神田の岡っ引・半七が追います。」『半七捕物帳 お文の魂』へ
作家相関図を見る(読むほど線がつながります)