
作男・ゴーの名誉
チェスタートン ギルバート・キース

原作: サレーダイン公爵の罪業 / 著者: チェスタートン ギルバート・キース / 翻訳: 直木 三十五
約10分・32ページ
水郷の島へ招かれたブラウン神父とフランボー。鏡に囲まれた屋敷で、奇妙な主従と過去の因縁に出会う。
結末まで書いています(ネタバレを含みます)
探偵業を一月休んだフランボーは、ブラウン神父と小舟でノーフォーク州の水郷を旅し、昔「探偵をまきて見当違いの逮捕をなさしむる手腕」をほめる招待状をくれたサレーダイン公爵の「蘆の家」を訪ねます。鏡張りの屋敷では、無愛想な給仕頭ポウルが家を取り仕切り、家政婦アンソニー夫人は、公爵は弟の大尉に強請られていると漏らします。帰宅した公爵のもとへ、六人の漕ぎ手を連れたアーントネリという青年が現れ、父を殺し母を奪った仇だと決闘を申し込み、公爵を刺し殺します。ところがその夜、ポウルは自分こそ本物のサレーダイン公爵だと名乗ります。殺されたのは身代わりにされた弟で、公爵は二人の敵をぶつけ合わせ、自分だけ身をかわしたのでした。
フランボーは探偵事務所の仕事を一月休み、鮭の缶詰、短銃、ブランデー、そしてブラウン神父を小さな帆舟に乗せて、ノーフォーク州の水郷を旅します。ある目的もありました。昔、犯罪界の王だった頃に受け取った、サレーダイン公爵の招待状です。そこには、堅気になったら訪ねてほしい、探偵をまいて見当違いの逮捕をさせる手際は見事だと書かれていました。月明かりの中で仙郷へ来たようだと喜ぶフランボーに、神父は、仙郷は必ず危険ではあると答えます。
島に建つ細長い蘆の家は、壁に姿見がはめ込まれた鏡の家でした。公爵は留守で、陰気な給仕頭ポウルが二人をもてなします。部屋には、公爵の弟ステーフィン大尉だという軍服の青年の写真と、二人の少年を描いた肖像がありました。ポウルによると、大尉は兄の金を使い尽くしたやくざ者で、公爵をこの片田舎に追いやったのだといいます。家政婦のアンソニー夫人は神父に、この家に善人はいない、取られる公爵にもよくない点があるのだとささやきました。
やがて、白い帽子に黄色い手袋という芝居がかった姿の公爵が帰宅し、鏡の部屋に五人の公爵が入ってきたように映ります。公爵は愛想よく客をもてなし、旅先の賭博場や山賊の話を語りますが、神父はその顔の輪郭にどこか見覚えがあり、そわそわした信用の置けない調子を感じます。家のことはすべてポウルに任されていて、召使の方が主人のように見えました。
夕暮れ、六人の漕ぎ手を連れた青年アーントネリが島に乗り込み、公爵の頬を打ちます。青年は、幼い頃に父をシシリー島の崖から突き落とし、母を連れ去ったのは公爵だと言い、だまし討ちはしない、父に与えなかった機会を与えると、二本の剣を芝生に突き立てて決闘を申し込みました。神父は、家政婦アンソニー夫人こそ青年の母だと気づきますが、召使たちは出払っていて、ポウルは助けを呼ぶと言って小舟で川上へ去っていきます。
二人の剣の腕は互角でしたが、ついにアーントネリの剣が公爵の背を貫き、公爵は薔薇の茂みに倒れて死にます。そこへようやくポウルが警官を連れて戻り、アーントネリは、自分はもう何も言わない、死刑を待つだけだと言って連行されました。神父は、警官の来るのが遅すぎたことに首をかしげます。
釣りから戻ったフランボーと屋敷をのぞくと、ポウルが主人の夕食を平然と食べていました。とがめるフランボーに、ポウルは、自分こそサレーダイン公爵だと名乗ります。不幸な弟スティーフンが庭で死んだと聞いた、と言って、老人は笑いをこらえて肩を震わせていました。神父とフランボーは、この地獄のような屋敷から舟で立ち去ります。
舟の上で神父は真相を語ります。公爵には、シシリーでの殺人の秘密を握って十年も金をしぼり取る弟と、父の仇を追う青年という二人の敵がいました。公爵は弟に家と衣裳を渡して公爵として住まわせ、自分は髭を剃って給仕頭になり、青年には隠れ家を知らせたのです。青年は兄弟の顔を知らず、弟は正体を明かさず、青年も家の秘密を語らないと読んで、決闘が終わるまで川で待ってから警官を呼んだのでした。その知恵は、あの招待状にあったフランボーの手口から借りたものだと神父は言い、二人は善良な人々の住む村へと川を下っていきました。
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探偵業を一月休んで、水郷へ。
SALMON
OLD PORT
VINTAGE 1903
食料、護身用の銃、気付けの酒。あとは神父さま。
ずいぶん念入りな旅支度じゃな。
この読切は全32ページ。続きは漫画ビューアで、スマートフォンでもそのまま読めます。
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結末に触れない紹介です
探偵の仕事を休んだフランボーは、ブラウン神父を連れて英国ノーフォークの川を旅する。かつて届いた招待状を頼りに訪ねたのは、蘆に囲まれた小島の屋敷。明るい部屋にはいくつもの鏡があり、無愛想な給仕頭と不安げな家政婦が、公爵の帰りを待っていた。優雅な主人の話、兄弟を描いた古い肖像、主従の間に漂う奇妙な気配。そこへ一人の青年を乗せた舟が近づく。夢のように美しい水辺で、神父は人々の言葉と振る舞いのずれを見つめていく。
チェスタートンのブラウン神父物で、1911年刊の短編集 The Innocence of Father Brown に収録されています。使用した日本語訳は直木三十五によるもので、底本は平凡社の1930年刊『世界探偵小説全集 第九巻 ブラウン奇譚』です。物語の舞台は英国ノーフォークの水郷。本漫画では二十世紀初めの衣装と舟を基調に、鏡と水面の反射で人物の見え方を描き分けます。
ブラウン神父とフランボーが訪ねたのは、水郷に浮かぶ公爵の屋敷。鏡の部屋、古い肖像、不思議な主従関係を手がかりに、美しい景色の奥にある不穏な気配をたどります。
結末には触れていません
英国ノーフォークの、川や湖が広がる水郷です。二人が訪ねる蘆の島と屋敷は、この物語の舞台として描かれます。舟がなければ移動できない場所であることも、場面を読む手がかりになります。
招待状の言葉、二人の兄弟を描いた肖像、鏡に映る顔、屋敷の中で誰が指図しているかに注目してください。神父が小さな違和感を覚える場面を、あとから振り返る楽しみがあります。
この作品だけで事件が完結します。フランボーは以前は犯罪に手を染め、今は探偵として働く人物です。その過去を知る者から届いた招待状が、今回の訪問のきっかけになります。
チェスタートン ギルバート・キース(1874〜1936年)です。この漫画は直木 三十五による翻訳をもとにしています。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の32ページで、約10分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
ポウルこそが本物のサレーダイン公爵です。兄を強請っていた弟に衣装や屋敷を譲り、自分は髭をそって召使を装いました。父の仇を追う青年に弟を公爵と思い込ませ、二人の敵を互いにぶつけたのです。
神父の説明では、公爵は決闘が終わるまで川で待ち、そのあとに警官を呼びました。弟が自分の身分を明かさず、青年も家の秘密を口にしないと見込んだためです。これは神父が事件後に示す推理です。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。