
刺青
谷崎潤一郎

原作: 春琴抄 / 著者: 谷崎潤一郎
約10分・31ページ(全6話)
二基の墓と一冊の伝記から、鵙屋春琴と温井佐助の生涯をたどる。最終話では佐助が春琴の顔を二度と見ぬと決め、二人が同じ暗闇で暮らした歳月と、それぞれの最期までを描く。

下寺町の二基の墓から始まり、春琴の少女期の才能と失明、佐助が手曳きとなって言外の要求を察する関係の始まりまでを描く。
佐助が夜ごと三味線を独習し、家族の前でその成果を披露する。熱心さを認めた春琴が、自ら師となることを告げるまでを描く。
春琴の苛烈な稽古に耐える佐助が正式な弟子となる。縁談、妊娠、出産を経ても二人が夫婦の名を拒み、主従と師弟の形を選び続けるまでを描く。
淀屋橋で独立した春琴が師匠として名声と敵を増やす。利太郎との決裂を経て、正体の分からない影が二人の夜へ入り込むまでを描く。
正体不明の襲撃者に顔へ熱湯を浴びせられた春琴が人目を避け、佐助も見ることを拒む。繃帯を外す日を前に、佐助が重大な決断を固めるまでを描く。
春琴の顔を二度と見ぬと決めた佐助が、師弟としてともに暮らす歳月をたどる。芸の深まりと別れ、二基の墓へ至る最終話。
STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
昭和初期の大阪。下寺町の高台に並ぶ大小二基の墓から、語り手は『鵙屋春琴伝』や鴫沢てるの証言をたどります。道修町の薬種商に生まれ、九歳で失明した琴は春琴と呼ばれる音曲の才人へ成長し、奉公人の佐助は夜ごとの独習を経てその弟子となります。鵙屋を離れて淀屋橋に居を構えた春琴は、佐助を手引き・弟子・奉公人として傍らに置きながら、厳格な師匠として名を上げます。やがて正体不明の何者かが寝間へ侵入し、春琴は顔に深い火傷を負います。伝記の記述、佐助の証言、周囲の噂が食い違うなか、春琴は誰にも顔を見せまいと閉じこもり、佐助もまたその顔を二度と見ぬ道を選びます。二人が同じ暗闇の中で師弟として暮らした歳月、春琴の芸の深まりと死、二十一年後の佐助の最期を経て、語りは下寺町の二基の墓へ戻ります。
原作は1933年発表。物語は昭和初期の語り手が、文政末から明治期の大阪に生きた春琴と佐助を資料と証言から再構成します。道修町の薬種商、町家の主従関係、盲人音曲家の芸道を時代層ごとに描き分けます。
谷崎潤一郎の中編「春琴抄」(1933年)を全6話で漫画化した連載です。九歳で失明した大阪の薬種商の娘・春琴と、彼女に生涯仕えた奉公人の佐助の関係を、残された伝記と証言からたどります。
結末には触れていません
語り手が伝記『鵙屋春琴伝』や関係者の証言を読み比べながら語る形式です。記述の食い違いが、真相をあいまいにし、読者の想像を誘います。
江戸時代末から明治にかけての大阪・道修町や淀屋橋です。漫画では昭和初期に墓を訪ねる語り手の視点と、過去の二人の姿を行き来します。
谷崎潤一郎(1886〜1965年)です。
初出は「中央公論」中央公論社、1933(昭和8)年6月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
全6話・194ページで、通して読むと約59分が目安です(1ページ18秒で計算)。1話ずつ区切って読めます。
何者かに熱湯を浴びせられて顔に火傷を負った春琴は、その顔を見られることを恐れます。佐助は自ら針で両目を突いて盲目となり、春琴の美しい顔の記憶だけを胸に仕え続けます。犯人は最後まではっきりしないまま、二人の特別な結びつきが描かれます。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。