
第三者
サキ

原作: ROMEO AND JULIET / 著者: シェークスピア ウィリアム / 翻訳: 坪内逍遙
約9分・29ページ(全10話)
古い憎しみを引き継ぐ二つの家。その争いが支配するヴェローナで、恋と若者たちの意志が動き始める。坪内逍遙訳をもとに描く、愛と家名の物語。

従僕の挑発から始まった乱闘に、領主は命をもって償わせると警告する。片思いに沈むロミオと縁談を持ちかけられるジュリエット。それぞれの思いが宴の夜へ向かう。
仮面をつけてキャピュレット家の宴へ入ったロミオは、踊るジュリエットに目を奪われる。聖者と巡礼にたとえた言葉が二人を近づける一方、ティボルトはその声を聞き分けていた。
庭の暗がりで、ロミオはジュリエットが家名を嘆く声を聞く。二人は名前を越えて互いの心を確かめるが、彼女は性急な誓いをためらう。明日の使者を約束した夜が、夜明けのロレンス神父の庵へつながる。
ティボルトの決闘状が噂される街で、ロミオは友人たちと明るく言葉を交わす。ジュリエットの使者として来た乳母に託すのは、昼過ぎの婚礼の約束。待ちわびる少女の焦りと、神父の慎重な戒めが、二人の再会へ重なる。
暑いヴェローナの街で、ティボルトがロミオに剣を向ける。争いを拒む理由を友人には明かせないロミオ。その態度に憤るマキューシオと、仲裁を試みるベンヴォーリオ。秘密の婚礼を知らない者たちの言葉が、危うい間合いを縮めていく。
夫を待つジュリエットのもとへ、乳母が取り乱して戻ってくる。ティボルトの死とロミオの追放を知った彼女は、従兄への悲しみと夫への思いの間で揺れる。一方、ロレンスの庵では、絶望するロミオに神父が生き延びる道を示す。二人の間を渡る指輪に希望が託される夜、キャピュレット邸では娘の知らない縁談が動き始める。
夜明けの窓辺で、ロミオとジュリエットは鳥の声に耳を澄ます。離れがたい二人に、朝の光が別れを迫る。夫を送り出したジュリエットに告げられるのは、木曜日の婚礼。家族との対立のなか、最後に頼った乳母の言葉も、彼女の心を遠ざけていく。ひとり庵へ向かう娘の訴えに、ロレンス神父は危うい救いの道を示す。
神父のもとから帰ったジュリエットは、父に従うふりをする。喜んだ父が婚礼を翌朝へ早めるなか、娘は母と乳母を下がらせ、一人で薬瓶に向き合う。効かなかったら、毒だったら、墓で先に目覚めたら。恐ろしい想像が押し寄せる寝室の外では、誰も事情を知らず、婚礼の準備が夜通し続いていた。
マンチュアで明るい夢を見たロミオのもとへ、ヴェローナから使者が来る。待ち望んだ神父の手紙はなく、伝えられたのはジュリエットの埋葬だった。貧しい薬屋、足止めされた修道士、夜の墓所に花を捧げるパリス。それぞれが知らない事情を抱え、同じ夜へ向かっていく。
夜の墓所で、ロミオはなお美しいジュリエットに語りかける。急ぐ神父、近づく夜番、まだ知らない事情を抱える両家。届かなかった言葉の行き先が、証言と一通の手紙によって明らかになっていく。愛と家名をめぐる全10話の最終話。
STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
ヴェローナの名家、モンタギューとキャピュレット。長年の憎しみは従僕たちにも受け継がれ、些細な挑発が町を巻き込む争いへ広がります。報われない恋に沈んでいたロミオは、敵方の宴でジュリエットと出会い、聖者と巡礼にたとえた言葉を交わします。庭の暗がりと二階の窓を隔て、二人が問うのは家名と心の関係です。名前が違っても薔薇の香りは変わらないという問い。変わりやすい月には誓わないでという願い。乳母が二人の間を走り、神父は恋の勢いを戒めながら婚礼を助けます。しかし街頭では、その婚礼を知らない若者たちの名誉と怒りがぶつかります。事件の知らせと追放、夜明けの窓辺での別れ。娘の涙を従兄への悲しみと受け取る母、別の婚礼を命じる父、現実的な道を勧める乳母の間で、ジュリエットは相談相手を失っていきます。自分の誓いを守ろうとする娘と、危うい望みに託す神父。一方、遠いマンチュアのロミオは、限られた知らせを頼りに動きます。婚礼と葬送の花、二通の手紙、墓所の灯りが、人々の異なる思いを結びます。詩的な言葉を交わす恋人たちの近さと、事情を知らない家族や友人たちとの距離。何が伝わり、何が届かなかったのかを辿りながら、恋愛の意志と、争いを引き継いだ者たちの責任に向き合う全10話です。
シェークスピアの英語原作は1597年に初刊されました。本漫画は、中央公論社が1933年10月30日に刊行した『新修シェークスピヤ全集 第二十五卷』所収の坪内逍遙訳を用いた青空文庫テキストに基づきます。舞台はイタリアのヴェローナと、追放されたロミオが滞在するマンチュア。衣服や建築はルネサンス期イタリアを参照した漫画上の造形で、原作が特定の年を指定しているという意味ではありません。
シェークスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』を、坪内逍遙訳(題名表記は「ロミオとヂュリエット」)をもとに全10話で漫画化した連載です。敵同士の名家に生まれた若い二人の恋と、その周囲の人々を描きます。
結末には触れていません
ロミオが庭からジュリエットの窓辺を見上げる場面は、物語の前半で描かれます。「名前が違っても薔薇の香りは変わらない」という問いや、「変わりやすい月には誓わないで」という願いが交わされる場面です。
明治から昭和にかけてシェークスピア全作品を日本語に訳した坪内逍遙の翻訳です。この漫画は1933年刊の全集版をもとにした青空文庫テキストに基づいています。
シェークスピア ウィリアム(1564〜1616年)です。この漫画は坪内逍遙による翻訳をもとにしています。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
全10話・283ページで、通して読むと約85分が目安です(1ページ18秒で計算)。1話ずつ区切って読めます。
ロミオは決闘でティボルトを殺してしまい追放されます。別の婚礼を迫られたジュリエットは、神父の薬で仮死状態になる計画に賭けますが、その知らせはロミオに届きません。墓所で彼女が死んだと思ったロミオは毒を飲み、目覚めたジュリエットも後を追います。二人の死を前に、両家はようやく和解します。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。