
きりぎりす
太宰治


STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
幼い三人の子どもと暮らす作家の父は、家庭でも人前でも冗談を絶やしません。心身が苦しいほど明るい空気を作ることを、自分なりの奉仕だと考えているからです。一方、母は授乳、食事、片づけ、来客対応を一手に引き受け、夫婦は互いの疲れと、四歳の長男の発達への不安を知りながら核心を口にできません。夏の夕食で母が漏らした「涙の谷」という一言から、怒鳴り声のない夫婦喧嘩が静かに深まります。白いタオル、伏せた札、黒い風呂敷を手がかりに、笑いと沈黙、愛情と逃避が同じ心に宿る痛みを追う心理劇です。
原作は『世界』1948(昭和23)年5月初出です。本文の「夏」「配給」「登録」と三鷹市の太宰治年譜を手がかりに、漫画では終戦直後の1947〜1948年頃の三鷹を想起させる木造家屋、仕事部屋、酒場として視覚化しました。本文が特定しない年月、住所、家族の実名は断定していません。
太宰治の晩年の短編「桜桃」(1948年)の漫画版です。幼い三人の子を持つ作家の父が、家庭でも冗談を絶やさない一方、夫婦のあいだの疲れと不安を口にできずにいる姿を描きます。
結末には触れていません
作品の冒頭と結びに置かれる有名な一文です。親の弱さを正直に認めようとする語り手の心が表れています。
さくらんぼのことです。物語の最後に登場し、父の心の揺れを象徴する小道具になります。太宰の命日6月19日が「桜桃忌」と呼ばれるのは、この作品にちなみます。
太宰治(1909〜1948年)です。
初出は『世界』1948(昭和23)年5月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の28ページで、約9分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
夫婦喧嘩のあと家を出た父は、酒場で出された桜桃を、子どもたちが喜ぶだろうと思いながら、まずそうに食べては種を吐きます。そして心の中で「子供より親が大事」とつぶやきます。家族への愛情と、そこから逃げてしまう自分への嫌悪が同時に表れた場面です。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。