
桜桃
太宰治


STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
病後の療養と生活苦のなか、船橋町の海辺の借家で原稿に向かう「私」のもとへ、戸籍調べの巡査が訪れます。その故郷訛りと、妻の名を聞いた瞬間、私は子供時代に女中のお慶へ浴びせた言葉や、絵本を切り抜かせた夏の日の残酷な振る舞いを思い出します。ところが巡査が語る現在のお慶と家族の暮らしは、私が恐れていた断罪とは異なる方向へ進み、過去をどう受け止めるかという緊張をいっそう深めていきます。林檎、濡れた紙の兵隊、夾竹桃、竹の杖、海へ投げる石をつなぎ、罪悪感と他者の記憶が食い違う瞬間を描く文学漫画です。
原作は「国民新聞」1939(昭和14)年3月初出。本文の現在時は船橋町の海辺で療養する「私」を描き、船橋市の記録では太宰は1935年7月から約1年3か月、療養のため当地で暮らしました。漫画版は本文とこの年譜を踏まえ、1935年夏ごろを想起させる借家と海浜として視覚化しています。
太宰治が1939年に「国民新聞」へ発表した短編「黄金風景」の漫画版です。貧しい療養生活を送る「私」のもとに、子どもの頃いじめた女中お慶の消息が届き、過去の罪悪感と向き合うことになります。
結末には触れていません
物語の終わりに、私が海辺で目にするお慶一家の姿を指す言葉です。まぶしい光の中の家族の風景が、私の心に残る罪悪感と対比されます。
太宰が千葉県船橋で療養していた頃の生活が下敷きになっています。貧しさと病の中で、過去の自分をどう受け止めるかが描かれます。
太宰治(1909〜1948年)です。
初出は「国民新聞」1939(昭和14)年3月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の22ページで、約7分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
海辺で、お慶一家が「あの方はお小さい時から、目下の者にも親切だった」と私をほめる声を聞き、私は立ったまま泣きます。恨まれていると思っていた相手に、思いがけず善意で記憶されていたのです。私はその優しさに「負けた」と感じ、それを明日への光として受け止めます。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。