
外科室 眠らない夫人
泉鏡花

原作: 高野聖 / 著者: 泉鏡花
約9分・27ページ(全7話)
雪の敦賀で出会った旅僧・宗朝が、若き日の飛騨越えと山中で触れた慈悲・欲望・怪異の記憶を語る、泉鏡花『高野聖』全7話の完結漫画。

雪の敦賀で宗朝の昔語りが始まり、飛騨の山麓で出会った無礼な薬売を見殺しにすまいと、警告された旧道へ踏み込むまで。
宗朝は天生峠へ向かう旧道を進み、巨大な蛇を越え、空から降る無数の山蛭に襲われる。死を覚悟しながら森を抜け、黄昏の孤家で次郎と美しい嬢様に出会うまで。
宗朝は山中の孤家で一夜を乞い、嬢様と奇妙な約束を交わす。親仁と次郎を残して十三夜の谷川へ下り、蟇が彼女の言葉に従うのを目撃する。洪水で生まれた水辺で法衣を脱がされ、背中一面の蛭の傷を見られるまで。
谷川で蛭の傷を洗われた宗朝は、嬢様の美しさと慈しみに心を揺らしながら孤家へ戻る。そこへ親仁が荒々しい蘆毛を連れ帰り、宗朝はその眼差しに昼間の薬売の面影を見る。嬢様が人ならぬ威厳で馬を鎮め、月夜の山路へ送り出すまで。
山家の夕餉で嬢様の世話と次郎の清らかな木曽節に触れた宗朝。夜更け、孤家を羊や鳥、牛など無数の獣の気配が囲み、眠る嬢様が三度『今夜はお客様があるよ』と告げる。宗朝が陀羅尼を唱えると一陣の風が吹き、すべてが不自然な静寂へ沈むまで。
宗朝は里近くの女夫滝で嬢様への想いに抗えず、滝へ飛び込む幻を見る。引き返そうとしたところへ親仁が金色の鯉を提げて現れ、蘆毛は薬売の成れの果て、売り銭が鯉になったと明かす。宗朝の話が語り手の『お上人……?』で中断されるまで。
親仁の語りから、嬢様の治癒力、次郎の手術事故、山村を滅ぼした洪水と十三年の献身が明かされる。宗朝は慈悲に隠れた煩悩を戒められ、雷雲の山を逃れて里へ戻る。翌朝、雪の敦賀で高野聖を見送る完結話。
STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
雪の敦賀へ向かう汽車で、若狭へ帰省する旅人は物静かな僧・宗朝と知り合います。二人は吹雪のため香取屋に泊まり、眠れない旅人の願いに応じて宗朝は若き日の飛騨越えを語り始めます。荒れた山道、無礼な薬売、洪水で分かれた本道と旧道。宗朝が選ぶ道の先で、信仰と慈悲、欲望と怪異が次第に分かちがたく重なっていく全7話です。
原作は1900年に『新小説』へ発表された泉鏡花の代表的な幻想小説です。鉄道と徒歩の旅、旅籠、売薬商、山間の旧道といった明治期の生活風景を背景に、旅僧の回想が聞き手へ語られる枠物語として構成されています。本漫画は原作の時代感と語りの余韻を尊重しながら縦読みへ再構成しています。
泉鏡花の代表作「高野聖」(1900年)を全7話で漫画化した連載です。雪の敦賀の宿で、旅の僧・宗朝が若き日の飛騨越えで出会った、山中の美しい女と不思議な出来事を語ります。
結末には触れていません
明治から昭和初期に活躍した作家で、幻想的で妖しい美しさをもつ作品で知られます。「高野聖」は鏡花の代表作です。
蛇や山蛭の出る荒れた山道の先で、信仰と慈悲、欲望と怪異が重なっていく幻想怪奇譚です。語りの入れ子構造が、話の不思議さを深めます。
泉鏡花(1873〜1939年)です。
初出は新小説 第五年第三巻(春陽堂、1900年2月1日)です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
全7話・181ページで、通して読むと約55分が目安です(1ページ18秒で計算)。1話ずつ区切って読めます。
親仁の話によれば、女は洪水で村が滅びた後も生き残った娘で、言い寄る男たちを獣の姿に変えてしまう力を持つといいます。女のもとへ戻ろうか迷っていた宗朝は、親仁から命が惜しければ去れと告げられ、我に返って里へ駆け下ります。語り終えた宗朝は教訓を付け加えず、雪の坂を上っていきます。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。