
芋粥
芥川龍之介

結末まで書いています(ネタバレを含みます)
長崎の教会で育ったろおれんぞは、傘張の娘の子の父だと疑われ、破門されます。それでも祈りを続け、一年あまり後の大火では娘の幼子を救うため火中へ飛び込みます。娘は疑いのもととなった嘘を告白しますが、救い出されたろおれんぞの命は尽きようとしていました。人々がその尊さを知る最期と、架空の古書を紹介する第二章が、読み手に判断の難しさを残します。
御降誕の祭の夜、長崎のさんた・るちやの戸口で助けられたろおれんぞは、教会で養われます。故郷は天国、父は天主と答え、強い信心を持ち、しめおんから弟のように親しまれます。
三年あまりが過ぎ、傘張の娘との噂が広がります。ろおれんぞは関係を否定しますが、娘の手紙を拾ったしめおんは問い詰めます。疑われる悲しみを訴えたのち、ろおれんぞは詫びの言葉を述べます。何を詫びたのか、しめおんにはわかりませんでした。
娘の父から、腹の子の父はろおれんぞだと告げられ、ろおれんぞは破門されます。貧しさや熱病に苦しみながらも、青玉の念珠を離さず、夜にはひそかに教会へ祈りに通います。しめおんは生まれた子を抱き、ろおれんぞを思い出します。
一年あまり後、長崎を大火が襲います。傘張の家に幼子が取り残され、しめおんも強い火勢に退きます。そこへ現れたろおれんぞが、祈りの声を上げて火中へ飛び込みます。周囲にはなお、親子だから助けるのだという思い込みが残っていました。
ろおれんぞは幼子を抱いて現れますが、燃えた梁が崩れます。最後の力で投げた幼子は母のもとに助かり、しめおんが再び火へ入って、傷ついたろおれんぞを救い出します。
娘は伴天連と人々の前で、子の父は隣家の異教徒の若者だと明かします。ろおれんぞに思いが届かない恨みから嘘をついたのでした。伴天連は悔い改める者を人が罰するべきではないと語ります。
ろおれんぞが女性であることが明らかになり、人々はその周りに跪きます。伴天連の祈りの中、ろおれんぞは安らかなほほ笑みを残して息を引き取ります。語り手は、その最期を知ることが一生を知ることではないかと問いかけます。
第二章では、語り手が長崎耶蘇会出版の「れげんだ・おうれあ」からこの話を採ったと説明します。これは実在の典拠の報告ではなく、古書の体裁や刊年まで詳しく記す、小説の枠組みです。漫画でも本を紹介する短い場面を置いています。
あらすじで流れをつかんだら、場面を漫画で確かめてみませんか。登録不要・無料です。
漫画で読む
長崎。さんた・るちやの教会。
御降誕の祭の夜、戸口にひとり倒れていた。
中へ。火にあたりなさい。
この読切は全26ページ。続きは漫画ビューアで、スマートフォンでもそのまま読めます。
続きを無料で読むSTORY GUIDE
結末に触れない紹介です
長崎のさんた・るちやの教会に拾われたろおれんぞは、青い念珠を手に、深い信心を持って育ちます。力の強いしめおんとも兄弟のように親しく過ごしていました。ところが傘張の娘との噂が広がり、身に覚えのない疑いを向けられたことで、教会の人々の態度は変わっていきます。孤独の中でも祈りを続けるろおれんぞ。その前に、町を焼く大火が迫ります。淡い色彩と静かな表情で、信仰、偏見、そして他者を救う行いを描く一話完結の漫画です。
1918(大正7)年9月の「三田文学」に発表された、芥川龍之介のキリシタン物の一作です。昔の長崎を舞台に、当時のキリスト教用語を交えた語り口で描かれます。物語の正確な年代は示されていません。漫画の町並みや衣装は、原文から着想した表現であり、特定の教会や大火の復元ではありません。
長崎の教会で育てられた、信心深いろおれんぞ。身に覚えのない噂をきっかけに、人々の親しみは疑いへ変わっていきます。祈りを捨てずに生きる姿を通して、信じること、裁くこと、人を救うことを問う物語です。
結末には触れていません
ろおれんぞは、故郷は「はらいそ」、父の名は「でうす」と答えます。原文では天国と天主の意味が示され、身の上の詳しい事情は明かされません。漫画では青い念珠とともに、この答えを描いています。
原文「故郷は「はらいそ」(天国)父の名は「でうす」(天主)」漫画の3ページでこの場面を漫画で見る
この作品では、天主の教えを信じるキリスト教徒を指します。教会に集まる人々の信仰と、同じ仲間に向ける疑いが、物語の大切な対照になっています。
原文では、それぞれ天国、天主、念珠という説明が添えられています。漫画では読める長さの言葉に言い換えながら、祈りと青い念珠を繰り返し描いています。
舞台の長崎は実在しますが、作品から教会の所在地や大火の年代を特定することはできません。第二章には古い本を紹介する形の文章が続きますが、その本の紹介も含めた小説の仕掛けとして読む必要があります。
芥川龍之介(1892〜1927年)です。
初出は「三田文学」1918(大正7)年9月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の26ページで、約8分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
娘はろおれんぞを恋い慕っていましたが、つれなくされたと感じ、恨みから自分の子の父だと偽りました。大火から子を救われた後、人々の前で本当の父は隣家の若者だと告白します。
原文「腹の子を『ろおれんぞ』様の種と申し偽り」漫画の21ページでこの場面を漫画で見る
人々が周りに跪き、伴天連が祈る中、ろおれんぞは安らかなほほ笑みを残して息を引き取ります。語り手は、一生の詳しい事情よりも、その最期に人々が受けた感動に目を向けます。
原文「安らかなほほ笑みを唇に止めたまま、静に息が絶えたのでござる。」漫画の24ページでこの場面を漫画で見る
第二章は、長崎で出版されたという古書の体裁や年代を細かく説明し、物語が記録から採られたかのように見せます。この長崎版の古書は小説の中の設定です。西欧の『黄金伝説』そのものが存在しないという意味ではありません。
原文「予が所蔵に関る、長崎耶蘇会出版の一書、題して「れげんだ・おうれあ」と云ふ。」漫画の25ページでこの場面を漫画で見る
長崎(市街地)おおよその位置
去んぬる頃、日本長崎の「さんた・るちや」と申す「えけれしや」(寺院)に、「ろおれんぞ」と申すこの国の少年がござつた。
物語の舞台となる長崎の市街地の目安です。作中の教会や大火の所在地・年代を特定した位置ではありません。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。

AI が作成した案内キャラクターで、本人の発言ではありません
「僕は芥川龍之介。東京で育ち、古典や説話に材を取った短い小説を書いてきた。夏目漱石先生に認められて、文壇に出ることができたんだ。」
「下人の行方は、誰も知らない。」——『羅生門』原文より
「はじめてなら『蜘蛛の糸』を。短いけれど、最後の一場面まで目が離せないはずだよ。」『蜘蛛の糸』へ
つながり:夏目漱石(師と弟子)菊池寛(学生時代からの友人)太宰治(芥川賞のゆかり)堀辰雄(師と弟子)谷崎潤一郎(「小説の筋」論争)新美南吉(同じ『赤い鳥』)魯迅(魯迅が翻訳)萩原朔太郎(田端の隣人)
作家相関図を見る(読むほど線がつながります)