
坊っちゃん
夏目漱石

原作: 吾輩は猫である / 著者: 夏目漱石
約7分・22ページ(全26話)
名もない猫の目を通して、英語教師・苦沙弥の家と人間社会の可笑しさを描く、夏目漱石の風刺小説を全26話で漫画化。

書生に捨てられた名もない子猫が苦沙弥家へ住み着き、主人と近所の猫たちを観察しながら、自らの居場所を定める連載第1話。
新年の苦沙弥家で絵葉書や主人の日記を眺めた吾輩が、留守の雑煮へ手を出し、餅に歯を取られて珍妙な騒動を巻き起こす連載第2話。
三毛子との穏やかな交流を重ねる吾輩が、主人たちの談話を経て彼女の病を知り、会えないまま引き返す連載第3話。
迷亭・寒月・苦沙弥が奇談を競う客間を離れ、三毛子を案じて訪ねた吾輩が、位牌と読経から彼女の死を知る連載第4話。
天然居士の墓碑銘に苦しむ苦沙弥のもとへ迷亭が現れ、細君の愚痴を面白がった末、寒月を呼び寄せて『首縊りの力学』の演説稽古を始める連載第5話。
迷亭が東風の高輪事件を語る苦沙弥家へ、向かいの実業家・金田の夫人が来訪し、娘の縁談を見定めるため寒月の人物調査を迫る連載第6話。
吾輩が金田邸へ忍び込み、金田夫妻と娘・富子が寒月を遠ざける相談を盗み聞きした末、苦沙弥家への嫌がらせが始まる連載第7話。
金田邸で金田夫妻が鈴木藤十郎へ苦沙弥への働きかけと寒月の縁談調査を頼む相談を盗み聞きした吾輩。帰宅後、苦沙弥夫妻の口論に続いて鈴木が現れ、旧友との再会から寒月の話を切り出す連載第8話。
鈴木藤十郎が寒月と金田令嬢の縁談を取り持とうとする一方、苦沙弥と迷亭は古今東西の人物や学者を引き合いに反論を重ねる。利害と旧交、世間体と学問が羊羹を挟んでぶつかり、鈴木と迷亭が夕暮れの路地へ去る連載第9話。
夜更けの苦沙弥家へ忍び込んだ泥棒を、吾輩は息を潜めて見届ける。山の芋まで盗まれた翌朝、巡査に告訴状を出すよう言われた苦沙弥夫妻は、被害品の値段と謎の言葉をめぐって事件そっちのけの夫婦喧嘩を始める連載第10話。
山の芋の贈り主・多々良三平が苦沙弥家を訪れ、子供たちと細君を相手に禿や実業、寒月の縁談を威勢よく語る。三平と苦沙弥が上野へ出た夜、役立たずと言われた吾輩は名誉を懸けて鼠捕りに挑み、深夜の台所を大騒動に変える連載第11話。
盛夏の苦沙弥家で、迷亭がパナマ帽や蕎麦の流儀を得意げに語る。やがて真夏に冬帽をかぶった寒月が現れ、博士論文のためガラス球を十年、二十年と磨き続ける研究を明かすが、金田家へ説明したという話は細君の一言で崩れる連載第12話。
真夏の座敷で迷亭が蛇飯と鬘の失恋奇談を語り、結婚論はギリシャの女医伝説へ脱線する。東風が現代詩と富子嬢への献辞を披露すると、苦沙弥は誰もが唱えて誰も見たことのない「大和魂」を朗読し、吾輩は人間の空論を見限って庭へ去る連載第13話。
人間の運動熱を冷ややかに眺めていた吾輩が、自ら蟷螂捕り、蝉捕り、松登りに挑戦する。成果に酔ったところを三羽の烏に嘲られ、全身の疲れと背中の痒みに悩んだ末、主人が手拭と石鹸を携えて通う洗湯へ様子を見に行く連載第14話。
洗湯へ忍び込んだ吾輩が、衣服と肩書を失った裸の人間たちの知識、虚栄、競争を観察する。帰宅後は酒を飲む主人の奇問と道楽談義を見届け、豚肉と魚の頭のおこぼれにありつく連載第15話。
落雲館の生徒が苦沙弥家へ入り込み、ボールを追う因縁が再燃する。苦沙弥は垣越しの教師との談判と公徳講話を信じて安堵するが、講話が終わるや八百の生徒が一斉に飛び出し、大事件の幕が開く連載第16話。
落雲館の生徒がボールと野次で苦沙弥家へ総攻撃し、苦沙弥は談判で応戦する。背後に金田の策を知った後、鈴木の現実主義、甘木医師の催眠術、八木独仙の修養論という三つの処方を前に考え込む連載第17話。
苦沙弥が自分の痘痕を数え、鏡に向かって顔つきや髭を研究する。三通の郵便と『天道公平』の怪文書に振り回された末、迷亭が噂の静岡の伯父を連れて来る連載第18話。
迷亭の伯父が兜割りと精神修養を語り、八木独仙と天道公平をめぐる奇談が主人の不安を募らせる。そこへ泥棒を連れた刑事・吉田虎蔵が現れ、主人は男前の泥棒へ頭を下げる連載第19話。
朝七時、空腹で目を覚ました吾輩は、掃除と身支度に追われる家族を眺める。ようやく始まった苦沙弥家の朝餉では、三人の娘と主人をめぐって、小さな茶碗や大きな椀が入り乱れる連載第20話。
迷亭の逆説を傘と保険へ応用する雪江。石地蔵の寓話や独仙の教えを持ち出し、帰宅した苦沙弥と保険・蝙蝠傘をめぐって応酬するうち、姪の意地と涙がこぼれる連載第21話。
大頭の書生・古井武右衛門が、金田令嬢へ送ったいたずらの艶書を苦沙弥に相談する。退校を恐れる生徒へ主人が「そうさな」を重ねる間、吾輩は人間の同情と世間の冷淡さを観察し、寒月の来訪が座敷と茶の間を別の騒ぎへ運ぶ連載第22話。
迷亭と独仙の碁を眺める吾輩の人間批評から、鰹節を土産に戻った寒月のヴァイオリン購入譚へ。周囲の制裁を恐れながらも楽器に惹かれ、十一月の陽が暮れるのを干し柿を食べながら待ち続ける連載第23話。
寒月は夜道を忍んでヴァイオリンを買い、誰にも知られず練習するため赤毛布を抱えて庚申山へ向かう。星明かりの古沼で幻想に浸った直後、正体不明の怪音に驚いて一度も弾かず逃げ帰る連載第24話。
寒月はガラス球磨きと博士号を断念し、富子との結婚を受け入れる。苦沙弥・迷亭・東風・独仙らの探偵論と文明論は、自己意識、交際、死生観、謝罪をめぐる応酬へ広がる連載第25話。
夫婦・恋愛・個人主義をめぐる談論に多々良三平の結婚話が加わる。残りのビールを飲んだ吾輩は水甕へ落ち、抵抗をやめて『ありがたいありがたい』と生涯を閉じる最終話。
STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
生まれて間もなく書生に捨てられ、池のほとりで飢えた一匹の子猫。竹垣の穴を抜けてたどり着いたのは、胃弱で気難しい英語教師・苦沙弥の家でした。名を与えられないまま住み着いた猫は、食べては眠る主人、勝手気ままな人間たち、白君や三毛子、車屋の黒ら近所の猫たちを冷静に観察します。尊大な語り口と小さな身体の落差から、人間社会の常識、知性、体面が次々に可笑しく見えてくる文芸風刺シリーズです。
原作は高浜虚子の勧めで書かれ、1905(明治38)年1月から1906(明治39)年8月まで『ホトトギス』に発表されました。本漫画は明治後期の東京の家屋、書生や教師の服装、台所・書斎・縁側の生活道具を参照し、猫から見上げる低い視点で再構成しています。人物や住居は原文とシリーズ設定に基づく創作表現で、特定の実在人物や現存建築をそのまま再現するものではありません。
夏目漱石の長編デビュー作『吾輩は猫である』を全26話で漫画化した連載です。名前のない猫が、英語教師・苦沙弥の家に住み着き、主人や訪ねてくる人間たちを冷静に観察して語ります。
結末には触れていません
日本文学で最も有名な書き出しの一つです。この漫画でも、捨てられた子猫が苦沙弥の家にたどり着く場面から始まります。
明治38年から雑誌「ホトトギス」に連載された、漱石の最初の長編小説です。猫の目から、人間の常識や体面の滑稽さを風刺しています。
夏目漱石(1867〜1916年)です。
初出は『ホトトギス』1905年1月〜1906年8月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
全26話・619ページで、通して読むと約186分が目安です(1ページ18秒で計算)。1話ずつ区切って読めます。
人間たちの飲み残したビールをなめて酔った吾輩は、足を滑らせて大きな甕に落ちてしまいます。もがいても出られないと悟ると、無理に出ようとするのをやめ、「南無阿弥陀仏、ありがたい、ありがたい」と太平を得て死んでいきます。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。