
吾輩は猫である
夏目漱石

原作: 坊っちゃん / 著者: 夏目漱石
約9分・29ページ(全11話)
曲がったことが嫌いで、考えるより先に動く江戸っ子の「坊っちゃん」。ただ一人まっすぐ信じてくれた清を東京に残して四国へ渡り、癖の強い教員や生徒たちと向き合う教師生活を描く全11話の漫画化。

二階から飛び降り、栗泥棒を追い、家族から将来を案じられた坊っちゃん。誰よりも彼を信じる清との絆を胸に、物理学校を卒業して四国の中学校教師として旅立つまでを描きます。
四国へ着いた坊っちゃんは、小さな汽車で宿へ向かい、翌日には中学校へ。大仰な校長、赤シャツ、うらなり、山嵐、野だいこと癖の強い教員陣に出会い、初授業を目前にします。
初授業で生徒の挑発と難問にさらされた坊っちゃん。天麩羅蕎麦、団子、赤手拭、温泉での泳ぎまで逐一黒板に書かれ、狭い町の監視と嘲笑に追い詰められていきます。
寄宿舎で初めて宿直する坊っちゃんを待っていたのは、毛布いっぱいのバッタだった。生徒を問い詰め、夜の廊下を駆け、夜明けまで意地を張り通す一夜を描きます。
赤シャツ、野だいこ、坊っちゃんは秋の海へ釣りに出る。魚をめぐる軽口に苛立つ坊っちゃんは、帰り舟で赤シャツから名指しを避けた含みのある忠告を聞かされます。
赤シャツから山嵐を警戒するよう吹き込まれた坊っちゃんは、氷水代の返済をめぐって山嵐と衝突する。午後の職員会議では、バッタ事件の処分をめぐり教員たちの立場が鮮明になります。
新しい下宿でうらなりとマドンナの噂を聞いた坊っちゃんのもとへ、清から長い手紙が届く。温泉へ向かう駅で噂の女性と赤シャツを目撃し、人間関係への疑いを深めていきます。
うらなりの延岡転任と自分の増給を知らされた坊っちゃん。下宿で転任の事情を聞き出すと、夜の赤シャツ宅へ押しかけ、巧みな説明を受けても増給返上の意志を貫きます。
うらなりの送別会で、校長と赤シャツは栄転と別れを惜しむ美辞麗句を並べます。やがて宴席が酒と芸者を呼ぶ騒ぎへ崩れるなか、坊っちゃんは孤立するうらなりを連れ帰ろうとし、山嵐も同じ側に立ちます。
日露戦争の祝勝会で町へ出た坊っちゃんと山嵐。剣舞の最中に生徒の乱闘へ飛び込み、新聞には扇動者と書かれます。山嵐だけに辞職を迫る処分へ坊っちゃんも辞表を差し出し、二人は赤シャツの動きを確かめるため角屋を張り込みます。
七夜目、角屋から姿を現した赤シャツと野だいこに、坊っちゃんと山嵐は『天誅』を下します。学校を辞めた二人は町を去り、坊っちゃんは清の待つ東京へ。正直さを貫いた先に見つけた帰る場所を描く最終話です。
STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
曲がったことが嫌いで、考えるより先に動く江戸っ子の坊っちゃん。家族から疎まれても彼を信じ続けた清を東京へ残し、四国の中学校教師として新生活を始めます。大仰な校長、気取った赤シャツ、追従する野だいこ、温厚なうらなり、豪放な山嵐、生意気な生徒たち――癖の強い人々に囲まれ、授業の挑発、温泉での監視、宿直室のバッタ騒動、釣り舟での含みある忠告に振り回されながらも、坊っちゃんは率直さを曲げません。清から届く手紙を心の支えに、うらなりの転任と自分の増給、送別会の美辞麗句、祝勝会の乱闘、新聞の虚報へ向き合ううち、敵味方だと思っていた人々の本心が少しずつ見えてきます。体面や履歴を守るのか、義理と正直さを通すのか。坊っちゃんと山嵐は、町を覆う偽善の正体を確かめるため行動を重ねていきます。
原作は1906(明治39)年4月の「ホトトギス」に発表され、翌1907年に春陽堂刊『鶉籠』へ収録されました。漱石自身の松山中学赴任経験を背景に持つ作品ですが、本漫画の人物像は作者の肖像ではなく原文とシリーズ人物設定に基づいています。明治後期の港、伊予鉄道の小型蒸気機関車、木造校舎、城下町、旅館や下宿の生活道具、和装女性の髪形や日傘を参照し、人物のあだ名と噂は坊っちゃんの主観や伝聞として描いています。 第8話の転任先である延岡は明治期に宮崎県へ編入された地域で、原文の船と馬車を乗り継ぐ長旅は当時の交通条件を示すものとして、坊っちゃんの主観的な旅程イメージに限定して描いています。第9話の会場は旧家老屋敷を料理屋へ転用した花晨亭の記録を参照し、五十畳の大広間、床の間、伊万里の大瓶と松、明治後期の宴席や芸者の装いを原作描写に沿って再構成しています。第10話は日露戦争後の祝勝行事、剣舞、新聞報道、瓦斯燈、明治後期の警察・学校・城下町の服装と建築を参照しつつ、特定の実在校名や新聞題字を画面へ持ち込まない匿名化した表現で再構成しています。第11話の帰京は明治後期の汽船・鉄道・新橋駅、街鉄の技手の仕事と東京の借家、原文に記された小日向の養源寺を基準に描いています。
夏目漱石の『坊っちゃん』(1906年)を全11話で漫画化した連載です。無鉄砲で正義感の強い江戸っ子の青年が、四国の中学校に数学教師として赴任し、癖の強い同僚や生徒たちとぶつかります。
結末には触れていません
赤シャツ、山嵐、うらなり、野だいこ、狸などは、坊っちゃんが同僚たちに心の中で付けたあだ名です。人物の特徴をひと言で表すあだ名が、作品のユーモアを生んでいます。
作中では地名が明示されませんが、漱石が愛媛県尋常中学校で教えた経験をもとにしており、松山がモデルとされています。「坊っちゃん湯」などの名所もあります。
夏目漱石(1867〜1916年)です。
初出は「ホトトギス」1906(明治39)年4月です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
全11話・309ページで、通して読むと約93分が目安です(1ページ18秒で計算)。1話ずつ区切って読めます。
赤シャツの策略でうらなりは転任させられ、山嵐も辞職に追い込まれます。坊っちゃんと山嵐は、赤シャツと野だいこが芸者遊びから朝帰りするところを待ち伏せて懲らしめ、そのまま町を去ります。東京に戻った坊っちゃんは清と暮らしますが、清はやがて亡くなり、坊っちゃんの寺に葬られることを望みます。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。