
香水紳士
大阪圭吉


裁判所なんてとこは、世の中の裏ッ側みたいなとこでしてね……
二十年も廷丁を勤めてりゃア、メンエキにかかっちまう
——ところがね、いまだに忘れかねる事件が、ひとつあるんですよ
この読切は全32ページ。続きは漫画ビューアで、スマートフォンでもそのまま読めます。
続きを無料で読むSTORY GUIDE
結末に触れない紹介です
裁判所に二十年勤めた廷丁が、いまだに忘れかねるという一連の裁判を語り始めます。窃盗、放火、そして殺人。法廷も担当の判事・検事も異なる三つの刑事裁判に、葭町の待合「つぼ半」の女将・福田きぬが、自ら申し出た証人として次々に現れます。どの被告とも縁のない彼女の証言は、ある時は被告に有利に、ある時は不利に働きました。殺人事件の弁護士・菱沼は、廷丁たちの話からその重なりを知り、偶然とは思えなくなります。しかし女将と被告たちの間には怨恨も情実も見つからず、次の公判は迫るばかり。思い余った菱沼は、知人の青山に相談を持ちかけます。廷丁が自分の目で見たことと後から聞いたことを重ねて、三度の証言が意味するものをたどる法廷ミステリーです。
原作は大阪圭吉が「新青年」1936(昭和11)年9月号に発表した探偵小説です。語り手は裁判所に二十年勤める廷丁で、日本橋北島町、蔵前、芝の三光町、目黒といった当時の東京の地名や、市ヶ谷行きの囚人自動車、横網町の震災記念堂などの言葉が登場します。本文は事件の単一年を明示しません。漫画の法廷内装、衣装、写真機の形状などは昭和初期を意識した視覚的解釈であり、原文が指定した事柄とは区別しています。
大阪圭吉の探偵小説「あやつり裁判」を全32ページで漫画化。三つの別々の刑事裁判に現れる同じ証人と、その偶然を疑い始めた弁護人を、廷丁の回想から追います。
結末には触れていません
裁判官や被告ではなく、法廷で働く廷丁の回想を軸に進みます。見たことと後で聞いたことが重なり、事件の輪郭が少しずつ変わります。
窃盗、放火、殺人という別々の事件です。それぞれの法廷に同じ女性が証人として現れることが、物語の疑問になります。
大阪圭吉(1912〜1945年)です。
初出は「新青年」博文館、1936(昭和11)年9月号です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の32ページで、約10分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
傍聴人の間で、裁判の有罪・無罪に金を賭ける博奕が行われていました。首謀者は福田きぬの夫です。常連の傍聴人になりすまし、休憩室で素人を誘い込んでいましたが、ついには証拠不充分で見通しの立たない裁判に、女房のきぬを使うようになっていました。青山はまず廷丁に公判廷をひそかに撮影させます。そして現像した写真を「つぼ半」の女中に見せ、写っている「旦那さん」を確かめました。翌日、警官たちが十四人ほどの傍聴人を取り巻きます。逃げ出したゴルフ・パンツの男を身体検査すると、封筒から名前と「有罪」「無罪」を書いた紙片が見つかりました。廷丁によれば、女将も亭主同様に重罪となりました。ただし、三つの事件の被告が実際に罪を犯したかどうかは原作でも確定しません。第三事件も、判決が「明日に延期」と告げられたまま、最終判決は語られません。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。