
春は馬車に乗って
横光利一


STORY GUIDE
結末に触れない紹介です
真夏の宿場で、一台の乗合馬車を待つ人々がいる。危篤の息子へ急ぐ農婦、秘密を抱えて逃げてきた若い男女、商売で大金を得て未来を思い描く男、馬に夢中な子ども。ところが老いた馭者は将棋と蒸したての饅頭に気を取られ、出発の時刻は延びていく。蜘蛛の巣から命を取り戻した一匹の蠅だけが、待つ人々と馬を別の尺度から見つめていた。短い場面を硬質に切り替えながら、偶然に同乗する命の時間と、人間の焦りを映し出す群像サスペンス。
原作は『文藝春秋』1923(大正12)年5月に発表され、横光利一が文壇に登場した時期の短編です。物語内の地名と年代は明示されません。本漫画は初出時代を視覚基準に、1923年前後の日本の農村宿場として衣装、電報、厩、饅頭屋、木造の乗合馬車を構成しました。
横光利一が1923年に「文藝春秋」へ発表した短編「蠅」の漫画版です。真夏の宿場で乗合馬車を待つ人々と、蜘蛛の巣から逃れた一匹の蠅の視点を交差させて描きます。
結末には触れていません
短い場面を映画のカットのように切り替える構成で、新感覚派の出発点の一つとされる作品です。人間の焦りと、蠅の目から見た世界が対比されます。
息子の危篤、秘密の逃避行、商売の成功など、それぞれに急ぐ理由があります。偶然同じ馬車に乗り合わせた人々の時間が一つに重なっていきます。
横光利一(1898〜1947年)です。
初出は『文藝春秋』1923(大正12)年5月号です。
著作権の保護期間が満了した作品で、青空文庫で原文を無料で読めます。このページの「青空文庫・原作情報」から図書カードへ移動できます。漫画は原作をもとにした翻案のため、台詞や構成が原文と異なる部分があります。
読切の29ページで、約9分が目安です(1ページ18秒で計算)。登録不要で無料で読めます。
出発した馬車は、居眠りした馭者のせいで崖道の曲がり角で車輪を外し、人馬もろとも崖下へ転落します。その瞬間、馬の背から飛び立った一匹の蠅だけが、悠々と青空へ飛んでいきます。人間の運命のはかなさを、小さな蠅との対比で突きつける結末です。
原文・底本・校正情報を作品ごとに記録します。